美少女擬人化が大流行だ。
今や戦艦だって馬だって美少女だ。
そこで僕は、社会の気の緩みを擬人化した。【木之湯ルミ】というキャラクターを考えた。社会の気の緩みに乗じて暗躍する。
出版社に提案すると、「採用だ。来月から連載頼むよ」と言われた。
すっかり僕は舞い上がって酒を飲んで寝てしまった。
起きると、イラストだったはずの【木之湯ルミ】が実体化してそこに立っていた。
「俺はまだ酔っているのか?」
「いえ。連載決定で喜ぶあなたの気の緩みに乗じて実体化させて頂きました。これから、社会を混乱に陥れる破壊活動を始めますね」
僕がデザインしたはずの美少女は夜の闇に消えていった。
(遠野秋彦・作 ©2021 TOHNO, Akihiko)